古地磁気・岩石磁気

シールドルーム

概要
海洋コアを構成する岩石・堆積物には、多くの場合、磁性鉱物が含まれています。地球には固有の磁場が存在するため、これらの岩石・堆積物はその形成時に地球磁場の方向・強さに応じて残留磁化を獲得し、この磁化はそのまま"化石"となり保存されます。残留磁化によって発生する磁場を測定することで、岩石・堆積物が保持する残留磁化を計算で求めることができます。
一般に、岩石・堆積物が保持している残留磁化は非常に微弱なため、発生磁場もまた非常に微弱です。そのため、測定には磁気的にクリーンな環境が必要になります。高知コアセンターの磁気シールド室は、パーマロイという、鉄とニッケルの合金で周囲が三層に囲まれた構造になっています。パーマロイは周囲の磁力線を集める性質があり、この金属で囲われた磁気シールド室内部の磁場は外部の約1/500程度にまで弱められています。内部の広さは世界最大級です。
磁気シールド室内には、パススルー型磁力計測装置・スピナー磁力計・カッパーブリッジ・熱消磁装置・交流消磁装置などが設置されています。

パススルー型磁力計測装置, 非履歴残留磁化器

パススルー型磁力計測装置, 非履歴残留磁化器

メーカー
2G
型番
Model 760R (U-channel), 615L
概要
液体ヘリウムに浸ったSQUID (Superconducting Quantum Interface Device)と呼ばれる超伝導素子をもつ超伝導磁力計は、わずかな磁気変化に対して敏感で、磁化強度が弱い試料の測定に適しています。特に遠洋で堆積した泥質堆積物や泥岩は磁化強度が低いため、泥岩試料の古地磁気測定に超伝導磁力計を用いることも多くあります。試料の残留磁化測定や交流消磁・人工磁化着磁を全自動で行うことが可能で、柱状試料 (U-channel)の連続測定も行うことができます。
仕様
測定可能試料 1インチ古地磁気試料 (およびさらに小さい試料) , 柱状試料 (U-channel)
測定可能残留磁化強度 (下限) 1×10-7 emu (1×10-10 A・m2)
交流磁場 0〜80 mT,
直流磁場
(非履歴残留磁化)
0〜0.1 mT
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

MPMS帯磁率計

MPMS帯磁率計

メーカー
Quantum design
型番
MPMS-XL5
概要
超伝導磁石および気化した液体ヘリウムを用いて磁場・温度を制御し、低温域(6-300K)における試料の磁気特性を SQUID によって測定する装置です。地質試料に含まれる主要な磁性鉱物としてマグネタイトがありますが、約110Kにおいて特有の磁気相転移を示すため、その検出などに使用されることがあります。
仕様
測定可能試料 直径 4 mmφ×長さ9 mm程度以下 (市販のストローに収まるサイズ)
温度範囲 1.9〜400 K
直流磁場 -5〜+5 T
測定可能磁化強度 (下限) 1×10-7 emu
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

VSM

VSM

メーカー
Princeton Meas. Co.
型番
MicroMag 3900
概要
均一磁場中に設置した検出コイルの近傍で、試料を一定の周波数・振幅で振動させると、コイルには誘導起電力が発生します。このシグナルを増幅・検出することにより、試料の磁気特性を測定します。磁場・温度を動的に変化させることが可能で、磁気ヒステリシス曲線(M-H曲線)、温度磁気曲線(M-T曲線)などの計測が行えます。
仕様
測定可能試料 100 mg 程度以下
温度範囲 室温〜700 ℃
直流磁場 -1.8〜+1.8 T
測・濶ツ能磁化強度 (下限) 1×10-4 emu
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

磁気天秤

メーカー
夏原技研
型番
NMB-89
概要
温度−磁化曲線の測定が可能です。キューリー温度を決定することができます。
仕様
測定可能試料 100 mg 程度以下の粉末状試料あるいは岩石片
温度範囲 室温〜700 ℃
直流磁場 0〜+0.8 T
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

カッパーブリッジ

カッパーブリッジ

メーカー
Agico
型番
KLY-3S
概要
試料の磁化率および磁化率異方性を測定することが可能です。
仕様
測定可能試料

(常温)

1インチ古地磁気試料 (およびさらに小さい試料)

(-192 ℃〜室温, 室温〜700 ℃)

粉末状試料, 磁化率のみ

測定可能磁化率
(下限)
1×10-6 SI
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

スピナー型磁力計

スピナー型磁力計

メーカー
夏原技研
型番
SMD-88
概要
試料を一定速度で回転させ、試料の周りに設置したフラックスゲートセンサーにより磁化ベクトルを測定する磁力計で、かなり強い磁化を持つ火山岩や変成岩などの測定を短時間で行うことが可能です。また、装置の様々な工夫により、堆積岩など比較的弱い磁化を持つ岩石の測定も可能になってきています。
仕様
測定可能試料 1インチ古地磁気試料 (およびさらに小さい試料)
測定可能残留磁化強度(下限) 1×10-5 emu (1×10-8 A・m2)
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

熱消磁装置

熱消磁装置

メーカー
夏原技研
型番
TDS-1
概要
三層のパーマロイによって磁気シールドされた電気炉であり、試料の消磁・着磁を行うことができます。
仕様
加熱温度範囲 室温〜700 ℃
炉内残存磁場 10 nT 以下
直流磁場 (着磁) 0〜100 μT
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

交流消磁装置

交流消磁装置

メーカー
夏原技研
型番
DEM-95
概要
三層のパーマロイによって磁気シールドされた空間に交流磁場を発生させるコイルが設置されており、コイルに流す電流と減衰時間を調節することによって、様々な条件で試料の消磁を行うことができます。試料は二軸回転するタンブラーにセットします。
仕様
消磁可能試料 1インチ古地磁気試料 (およびさらに小さい試料)
発生可能交流磁場 0.2〜180 mT
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室

パルス磁化器

パルス磁化器

メーカー
MagneticMeasurements
型番
MMPM10
概要
パルス磁場を作用させ,試料に等温残留磁化(IRM)を与える装置です。
仕様
作用磁場 0-9 T (1.25 cm コイル), 0-3 T (3.8 cm コイル)
機器のある場所
古地磁気・岩石磁気実験室
ページトップへ戻る